投資で失敗しないための心得
投資に失敗はつきものです。全ての取引で利益を出す、というのは無理な話です。問題は失敗した状況で、少額ならともかく大金で失敗する、あるいは信用取引などで投資資金以上のお金を使って失敗すると致命傷になりかねません。ここでは、投資での失敗に関するお話しをまとめたいと思います。
投資に失敗はつきもの、でも…
投資で失敗したらどうしよう、投資に失敗して損失が出たら…そう考えている人もいるでしょう。筆者は2016年時点で約10年投資を続けていますが、筆者個人の見解としては「失敗は当たり前」です。最初の数回ならマグレで大当たりはあるかもしれませんが、回を重ねるごとに失敗の可能性は上がります。
問題なのは失敗すること自体ではなく一回の失敗が致命傷になること、つまり投資が続けられない状態になることです。失敗しても手元に資金が残り、過去の投資で何が問題だったのかを反省して改めれば挽回のチャンスは存在します。ここでは筆者の失敗談を含めていくつか紹介したいと思います。
投資で失敗するとどうなる?
投資で借金してしまった場合
通常の株式投資である現物投資、投資信託などでは損失が発生したとしても最大値は投資金額です。つまり100万円投資して損失が発生しても最大損失は100万円となります(厳密には売買手数料分はマイナスになる可能性はあります)。そのため、投資したお金自体が無くなることはあっても借金を背負う事態にはなりません。
ただし、以下のケースにおいては失敗すると投資資金を失うどころか借金をしてしまう可能性があります。これらはいずれも実際の投資資金以上の金額で投資することが出来る方法です。
・株式の信用取引…投資金額の3倍まで
・FX(外国為替証拠金取引)*レバレッジありの取引…投資金額の25倍まで
・(融資を受けての)不動産投資…銀行次第ですが、最大で物件価格と同程度の場合あり
例えば信用取引を利用して株式に投資する場合、最大で投資資金の3倍まで利用することが出来ます。想定通り株価が上昇すれば3倍の利益になりますが、株価が下落すれば3倍の損失となります。例として50万年の投資資金なら信用取引3倍を利用で評価金額は150万円になります。
そして株価が半分になれば評価金額は75万円となり損失は75万円(75万円-150万円)、つまり元本の50万円で相殺しても-25万円となります。この-25万円は証券会社に返済する必要があるので、この金額が借金となります(厳密には売買手数料を始めとしたコストが発生しますので、総額は更に上乗せされます)。
SBI証券(旧SBIイー・トレード証券)−オンライントレードで株式・投資信託・債券を−
参照元:All About(2016年3月時点、著者調べ)
FXのレバレッジ、長所・短所は? [FX・外国為替証拠金取引] All About
参照元:All About(2016年3月時点、著者調べ)
借金が返済できずに破産する可能性も!
株式の信用取引やFXのレバレッジをかけて成功すれば大きな利益となりますが、失敗した際には大きな損失となります。とはいえ最悪、損失が発生しても損切りして借金まで行かない、あるいは損切りできず借金が発生しても預貯金などで補てん出来るケースはまだセーフです。今回の失敗を冷静に見つめて投資から離れることも、再度出直すことも可能だからです。
問題は、ここから更に失敗を重ねてしまうケースです。人間、失敗をしてしまうとその失敗を取り返そうと躍起になってしまい、結果として更に傷を広げてしまう事があります。損切りが出来ずに延々と追加資金を投入する、足りない資金を消費者金融などから借りて投資を続行するといったケースです。
この場合、高い借金の返済利息を返すために平均的な利回りをはるかに超えた利益を期待するようになります。この状態で期待するのは「投資」ではなくて「投機」、あるいは「ギャンブル」です。もちろん場合によっては利益を出すことがあるかもしれませんが、ほとんど失敗に終わります。なぜなら、これまでが駄目だったから現在の状況になっているため、反省や見直しをせずに続けているなら今回も失敗に終わる可能性は高い、と考えるべきです。
最終的には借金が雪だるま式に増えてしまい、返済の目途が立たずに自己破産というケースも考えられます。借金で借金を重ねてしまう状況は絶対に避けましょう。何のために投資をしたのか、改めて自身の原点を見つめ直すべきです。
投資と投機、ギャンブルはどう違う |マネー研究所|NIKKEI STYLE
参照元:NIKKEI STYLE(2016年3月時点、著者調べ)
最悪、離婚の可能性も…
夫にしても妻にしても、投資に失敗しても相手には内緒にしているケースが多いようです。多くの場合、少しでも今後の生活費を稼ぐために、あるいは子供の教育費を払うために投資を行って不足分(または余剰資金の確保)を補うことを目的としています。中には自分の小遣い稼ぎのつもりで始める人もいるでしょうが、問題なのは相手が投資で失敗した事実を知らないということです。
失敗の範囲が小遣いを使い切っただけならまだしも、生活費や教育費の支払いに影響を及ぼすと当人は焦ってしまい、失敗を取り戻そうと更に失敗を重ねる可能性があります。どの段階で発覚するかにもよりますが、相手の心証は非常に悪くなります。資金の状態(借金をしているか、借金はしていないが投資資金が大きく減ったか)に関わらず、最悪は離婚の可能性も考えられます。
最初からキチンと投資する旨を話して、経過報告をしっかり行うのが理想です。それを怠っていたなら早いうちに打ち明けましょう。時間の経過とともに関係が悪化する可能性は高まります。「金の切れ目が縁の切れ目」と言いますが、夫婦であっても十分に考えられる話であることは認識しましょう。
筆者の失敗談
2008年のリーマンショックで大きく元本割れに
別項で記述しましたが、筆者は2016年時点で約10年投資を続けており、株式と投資信託をメインに投資しています。この10年間で何度か失敗を経験しましたが、最も大きな失敗は2008年の「リーマンショック」です。筆者と同世代以上で投資経験者なら、この時に苦しい思いを経験された方は多いのではないでしょうか?中には大きく利益を確定させた方もいらっしゃったでしょうが、損失を出した人の方が多かったでしょう。
筆者は2005年頃から投資に対して興味を持ち、2006年に社会人として就職した以降は実際に投資を開始していました。当時は相場環境が良かったのもあって、自分が調べて良いと判断した個別株式と投資信託の積み立てで多少の利益を得ていました。しかしリーマンショックで状況が一変、ほとんどの個別株式と投資信託で元本割れとなり一時は元本比-30%となりました。これは100万円の元本が70万円になったということです(正確な金額に関しては伏せさせて頂きますので、ご了承ください)。
特に個別株式に関しては、相場環境が良かったために大して調べもせず投資した株式があり、とても後悔しました。これらの株式は業績が回復する自信を持てなかったので、評価損でしたが売却を実施。会社の業績があまり良くなかったのも影響し、日々漠然とした不安を抱えていたのを覚えています。
リーマン後収入ゼロ!優待生活を始めた桐谷さんの秘密 [株主優待特集] All About
参照元:All About(2016年3月時点、著者調べ)
「資金管理」が出来ていたから、再出発できた!
2008年前半までは比較的投資に対する熱気が高く、株式関連の雑誌には成功した個人投資家の特集が大きく組まれていました。しかしリーマンショックにより姿を消した個人投資家も多く存在します。その多くは信用取引などで実際の資金以上に投資して成功を収めていたのが、リーマンショックの相場激変に対応しきれず大きな損失を出したためと言われています。
当時大きく元本割れしたとはいえ、筆者が投資を続けられたのは以下の要因があったためと考えます。
?投資方針を改めて見直した
?正社員として毎月、定期的にお金が入ってきていた
?数年間は使う予定のない、余裕資金のみで投資していた
?信用取引を行わず現物取引のみだった
?元々、私は四季報などで投資先の情報を調べた上で投資をしていました。しかし2008年までは比較的、相場環境が良かったのもあって大して調べずに投資した株式が増えていました。それらが評価損になると、そもそも何故投資したのか?どこに魅力があったのか?が自分でも答えられませんでした。明確に答えられない株式は全て売却しました。筆者の生活において必要だと感じる、あるいは魅力を感じた株式にのみ投資を絞りこんだことで、それらは大きな利益となりました。もちろん全てが利益になったわけでなく、相場の回復による面もありますが自分で納得して投資したというのは大きな自信に繋がりました。
?前項で会社の業績が良くなかったと記述しましたが、それでも毎月決まった金額が入ってくるのは大きな安心感でした。決して世間一般と比較すると高収入ではありませんでしたが、独身ということもあって毎月ある程度の貯金が出来ていましたし投資に回すお金にも余裕がありました。
?当時、筆者が読んでいた投資に関する本で余裕資金での投資を推奨していたので、最悪無くなっても直ぐには困らない程度の資金で投資をしていました。そのため預貯金には常に手取り収入の半年分程度は保有していました。2008年時点で大きく元本割れがしていたとは言っても日々の生活には直接影響は無かったため、不安を抱えつつでも仕事と私生活を頑張れたのは大きかったと思います。
?ここが一番重要な点だと思いますが、元本割れが起こったといってもあくまで評価損です。一部、ろくに調べずに購入した株式は売却しましたが、業務内容や方針が問題ないと判断した株式は相場の回復に伴い必ず持ち直すと考えていました。最悪全てが駄目になってもゼロなので借金に至ることはありませんでした。しかし信用取引で元本以上に投資していたら、持ち直すまでに投資資産が耐え切れず借金の可能性さえありました。間違いなく多大なストレスを感じ、更に不安な気持ちで過ごしていたと思います。
投資信託の定期積み立てが大きな利益に
投資信託を個別株式と併用して利用していましたが、利用していた投資信託は純資産額が大きく、信託報酬が安かったため(2016年時点ではもっと低い商品はありますが)2006年から毎月積み立てを利用していました。このまま続けていていいのか不安になった時もありましたが、毎月の運用報告書や定期的に実施されるセミナーで運用方針がブレていないことを確認。
積み立ての利用を継続したことにより結果的に安値で購入することが出来、相場の回復に伴い大きく評価額が上昇しました。結果論な部分はあると思いますが、報告書やセミナーで確認し続けたのは間違いでは無かったと考えています。
また報告書やセミナーで筆者自身も勉強することが出来ましたし、定期積み立ては最初の手続きさえ実施すれば後は自動というのも大きかったです。運用方針がブレていないことさえ確認出来れば月々金額が積み上がっていたので、気づいたら大きな金額となっていました。上記の画像が正に少しずつ大きくなっていることを象徴しており分かりやすいでしょう。
投資の失敗に関するまとめ
今回、筆者の失敗談とそこからの持ち直しも含めて紹介しましたが、いかがだったでしょうか?もちろん今後に関しては何一つ保証がありませんし、相場の変動次第では大きく損失を出すかもしれません。
ただ1つ言えるのは、「資金管理」をしっかり行うということです。借金するのも破産するのも、資金管理が出来ていないために起こる出来事です。信用取引を行っても、どの時点まで株価が変動したら借金になるのか?そこの見極めが出来ていれば、取引に失敗したとしても借金する前に処理することは可能です。あるいは投資以外の予備資金を準備しておけば不測の事態に対応することは十分可能です。
企業が倒産する最大の要因は製品の売れ行きが悪かったからではありません。売れ行きが悪くても、手元に資金があれば失敗を教訓にして新たに挑戦できます。最大の問題は製品が売れずに「資金が尽きた」時です。これは企業だけでなく、個人の家計や投資においても同様です。
いかに想定外の事が起きた時に資金管理がしっかりと出来ているか?これこそが最も重要なポイントであると考えます。信用取引やレバレッジの利用は各自の判断で構いませんが、資金の管理だけは徹底しましょう。この点に注意しておけば、失敗してもやり直すことは十分に可能となります。投資に失敗はつきものです。
間違いなく経験を積むことは出来たので、失敗しても過去の取引を見直して反省し、本やセミナーなどで知識を蓄えれば次回の投資では大きく改善できます。失敗しても致命傷を避けられるような、資金管理を徹底し計画を立てて投資しましょう。
公開日:
最終更新日:2017/01/24