投資信託で大損する理由は運用の問題にある
投資信託の種類は2016年時点で約4,000本が存在します。しかし、この4,000本全てが優れた商品か?と問われると別の話。お勧めどころか、何故存在するのか不思議な商品も存在します。結果として大損してしまったという意見も出る投資信託について、何が問題なのかをまとめてみました。問題点が分かり対策出来れば損をする可能性はグッと減ります!
投資信託で大損、なぜ起こる?
投資信託とは不特定多数の人から資金を集めてプロが運用する商品です。プロが運用するから個人がやるより安全で大丈夫。そう思っている方、多いのではないでしょうか?確かに投資とは無縁の人達に比べて経済や為替の動きに精通しているでしょう。しかし実際に投資信託で大損した、という意見もテレビや雑誌、WEB上で確認出来ます。
投資信託は世界の様々な金融商品に対して幅広く投資できる、優秀な商品なのに、なぜ大損してしまうのでしょうか?そもそも、購入した投資信託の中身について、きちんと理解されているでしょうか?大ざっぱにまとめると以下の3点が問題のようです。
・投資家(購入者)の問題点
・販売店側の問題点
・商品自体の問題点
ここでは投資信託に関わる様々な問題点についてまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。
投資家(購入者)の問題点
投資信託の中身を理解していない
投資信託を購入する時、内容をあまり理解していないからとりあえず銀行や証券会社の窓口で相談する、あるいは別件でよった時に向こうから声をかけられる。そして窓口の担当者が薦めてきた投資信託を「とりあえず」購入した、といった経験ある方が多いようです。
まずここが大きな問題です。投資信託の商品名は分かっていても、その中身について理解していないことが多いようです。投資信託と一口でいっても内容は様々です。最低限、下記の点は購入前に知っておく必要があります。
・商品構成:株式/債券/不動産(REIT)のみ、あるいは複合型なのか
・投資先地域:日本/先進国/新興国のみ、あるいは複合型なのか
・現在の基準価格、純資産額、運用期間
・販売手数料、信託報酬といったコスト
これらは目論見書に通常、記載されている内容です。他にも確認すべきことは色々あるのですが、最低限これぐらいは知っておく必要があるでしょう。「リスクはあなたが何をやっているか理解していない時に起こる」。これは世界でも指折りの投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉です。購入すること自体は止めませんが、最低限中身を理解してからにしましょう。
似通った投資信託を複数持つ
投資信託は複数の金融商品に投資しているので分散投資が出来るというメリットがあります。そのため投資信託を複数購入すればさらに分散効果は増しますが、これは1つでは補えない部分を補強する際に効果を発揮します。
仮に3つの投資信託を保有しているなら、以下のような配分なら分散効果が表れます。
?日本株式で編成された投資信託
?日本債券で編成された投資信託
?海外株式で編成された投資信託
このような配分なら、投資先が被らないため意味を持ちます。ですが全てが日本株式のみ、あるいは日本債券のみだった場合は分散の意味がありません。運用会社が違っても、投資する資産クラスが似通っていると大きな差は出にくくなっています(全くない、というわけではありませんが最初は違う資産クラスに投資する方が分散の効果が高いです)。
意外に似通った資産クラスを複数保有される方もいらっしゃるようです。基本的には国内外の資産クラスにバランス良く投資することが、リスクを軽減して長期間運用を続けることが出来ます。
「ファンドの組み合わせを考えよう!」 - 注目の投信(第24回) - 投資信託 - K-ZONE money(ケイゾンマネー)
参照元:K-ZONE money(ケイゾンマネー)(2016年3月時点、著者調べ)
販売店側の問題点
販売手数料の高い商品を優先する
全ての金融機関窓口がそうである、とは言いませんが全体の傾向として金融機関の売りたい商品を勧められることが多いようです。筆者自身も別件で伺った際、投資信託を勧められましたが手数料の高い商品ばかりでした。何故このようなことが起こるかというと、投資家と銀行の儲けは相反するためです。
投資家が投資信託を購入する際、注視することの1つに「コスト」があります。投資成績に関しては運用状況や市況の影響により確約はされませんが、コストは結果がどうであれ必ず払う必要があります。そして、ここでいうコストとは「販売(購入)手数料」と「信託報酬」を指します。販売手数料は購入時に販売会社、つまり今回の例だと金融機関に支払う手数料です。信託報酬は運用中常にかかる維持費のようなもので、取り分は主に運営会社ですが金融機関にもいくらかが支払われます。
つまり、投資家にとってコストが低ければ低い方が良いのに対して、金融機関にとっては高ければ高いほど良い、ということになります。コストが高くても運用成績が良ければ構わないと思われるかもしれませんが、コスト高=運用成績がよいという図式は成立しません。金融機関の担当者にもノルマ/目標があり、全てではなくとも顧客からの手数料で成り立っている部分があります。
同一の投資信託であっても、ネット証券からの購入なら販売手数料0(ノーロードといいます)の商品はたくさんありますし、信託報酬が低くても優れた運用成績の商品は存在します。「投資家(購入者)の問題点」でも触れましたが、投資家自身が十分な知識を備えておけば防げる問題でもあります。窓口の勧めた投資信託を鵜呑みにせず購入するよう心がけましょう。
投資信託のコスト - 投資信託協会
参照元:投資信託協会(2016年3月時点、著者調べ)
信託報酬│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
参照元:SMBC日興証券(2016年3月時点、著者調べ)
「売れている」商品を優先する
金融機関窓口で投資信託の相談をすると、手数料の高い商品を優先すると前項で記述しました。もう1つ覚えてほしいのが、売れている商品を優先するという点です。一見何の問題も無いように思えますが、ここに落とし穴があります。
販売会社、運用会社は目玉として設定した投資信託に力を入れて販売します。すると宣伝を行って多くの人達に認知されて商品としては売れていきますが、「売れている商品=運用成績の優れた商品では無い」、という問題があります。下記リンクに詳細がありますが、純資産額がトップでも成績は上位の投資信託と比較すると明らかに見劣りしています。
投資信託は投資初心者には運用成績などが少々分かりにくくなっているため売れている商品に目が行きがちですが、あまり有名で無く売れていない投資信託でも運用成績の優れた商品は存在します。あくまでも指標の1つ程度にとどめておきましょう。
なお、販売店が勧めるという理由で、この問題点は販売店に分類しました。しかし販売店からすれば売れていない商品を薦めて損失を出したら言い訳が効かないので、必然的に売れている商品の案内をせざるを得ない側面も存在します。つまり最終判断を下した購入者の責任でもある点は覚えておきましょう。
9割が知らない投資信託の事実「平均点」を上回る投信は極少数!|はじめての「投資信託」で、絶対に知っておきたいこと|ダイヤモンド・オンライン
参照元:ダイヤモンド・オンライン(2016年3月時点、著者調べ)
商品自体の問題点
毎月分配型における分配金の意味
投資信託で最も人気が高いのは「毎月分配型」と呼ばれる種類です。これは毎月決算を行い、その度に分配金を出すという内容です。値動きに関係なく一定の金額が毎月もらえるため年代を問わず人気を集めています。
ただし毎月分配型の内容を正しく理解していない人が多いようです。それは分配金=銀行預金の金利では無い、ということです。分配金の利回りが10%を超えている商品が多いですが、その多くは基準価格から取り崩して運用しています。つまり元本は減り続けているという側面を持っています。
実際に各商品の目論見書を確認してみると分かりますが、ほとんどの毎月分配型は利益が出ていません。投資先からの収益から費用(信託報酬など)と分配金を差し引くと大きな損失となっています。利益が出ていないにも関わらず分配金を出すとしたら基準価格、つまり投資家から預かった元本から支払うしかありません。ほとんどの投資信託は1万口あたり基準価格1万円で運用開始しますが、1万円を割り込んで3,000円、4,000円まで下がっている商品は非常に多い状況です。何よりコストである販売手数料、信託報酬は他商品に比べて割高なケースがほとんどです。
10年20年単位で見ると、元本割れをしていても分配金と合わせると利益が出ているケースはあります。しかし毎月分配型でない、例えば低コストのインデックスファンドに投資したほうが運用成績は高いのが現状です。毎月一定の金額を得られるのはメリットですが、若い世代でこれから資産を形成しようと考えている人達にはあまりお勧めは出来ません。
毎月分配型で相次ぐ分配金の引下げ…その理由は? [投資信託] All About
参照元:All About(2016年3月時点、著者調べ)
通貨選択型
通貨選択型とは投資対象の通貨とは違う通貨を選択することが出来る商品です。2010年代前後から徐々に数を増やしており、ほとんどが毎月分配型。これは投資対象の金利に加えて選択した通貨との為替取引でプレミアム(金利差相当分の収益)を得ようというタイプのものです。
分配金の高さから魅力的な商品に思えるかもしれませんが、非常に内容が複雑で分かりにくい商品です。基本は前述した投資対象と為替プレミアムから収益を得ますが、以下のような商品も出ています。
・2階建て(投資対象、為替プレミアム)
・3階建て(投資対象、為替プレミアム、原資産カバードコール)
・4階建て(投資対象、為替プレミアム、原資産カバードコール、為替カバードコール)
特に4階建ては複雑すぎて、専門家はともかく一般投資家だと正確に理解されている人は少ないようです。そして内容が複雑な商品はコストが高い傾向にあり、信託報酬で見ても1.5%以上がほとんどです。毎月分配型のケースも多くあり、結果として損失を被る可能性も高いので注意が必要です。
「通貨選択型の投資信託」とは? | 日本証券業協会
参照元:日本証券業協会(2016年3月時点、著者調べ)
テーマ型の商品
テーマ型とはIT企業のみ、資源関係企業のみといった特定のテーマに関連した企業のみに投資する商品です。例えばIT企業型投資信託だと、家電や半導体会社といったIT関連企業の株式だけを組み入れています。一見すると分かりやすく、便利な商品に思えますが長期間の運用には向いていない商品が多い傾向にあります。
株式市場において1つのテーマがずっと支持されるというのは稀なケースです。大抵は2〜3年程度で飽きられて別の投資先への物色が始まり、それまで話題になっていたテーマに関連した投資先の企業は売られてしまいます。つまり、株価は急落しがちになります。テーマ型は関連企業に特化した構成になっているので、結果として運用成績は悪化を辿ることとなります。
IT関連の投資信託が出てきたとき、「これからはITの時代」と大きく宣伝されましたが、結果的にはITバブルは崩壊しました。テーマ型は投資先を集中して運用の効率化を目指すという反面、一度崩れると立て直しが難しい側面を持っています。保有すること自体は否定しませんが、せめて他商品との併用を心がけましょう。
テーマ型ファンド - 用語集
参照元:三菱UFJ信託銀行(2016年3月時点、著者調べ)
大損を避けるための分岐点/対策とは?
運用成績やコストを確認する
これを注意しておけば、必ず大損を避けられる!…とは言い切れませんが、確率や損失額をグッと減らせる方法はあります。まず第一に、運用成績やコストをしっかり確認することです。例えばモーニングスターという情報サイトでは投資信託を検索した際に、過去の成績や現在のコスト等を確認出来ます(下記リンク先参照ください)。
運用成績はあくまでも過去のものですから今後を保証するものではありません。これだけで「良い」投資信託を選べるとは言えませんが、「悪い」投資信託を選ぶ可能性は減らせます。また、コストも運用成績に大きな影響を与えますから、必ずチェックするようにしましょう。内容(投資対象が国内株式だけか、海外とのミックスか等)によるため一概には言えませんが、筆者個人としては信託報酬が2%を超えるようだとコストが高いと思っています。
なお、運用期間が半年未満といったように短いと成績について判断出来ません。販売会社や運用会社、運用担当者に思い入れがある(他の投資信託で結果を出している担当者)等の理由があり、自身があるなら利用しても構わないと思います。しかし投資初心者はなるべく手を出さず、運用実績の長い(個人的には最低3年〜)投資信託から選ぶことをお勧めします。
投資信託のモーニングスター|ファンド詳細検索 投資地域も格付けも、コスト・リターン・レーティング、リスク指標、投資スタイルで更に詳しく比較して検索!
参照元:モーニングスター株式会社(2016年10月時点、著者調べ)
『基準価額』を使って投資信託が儲かっているかどうかを判断する方法|
少額から投資できることで人気の投資信託ですが、お持ちの投信が今までにいくら儲けているのかご存じですか?今回は、投資信託の『基準価額』をもとにした指標や数値を正しく理解することで、どれだけ儲けているのかを判断する方法をご紹介します。
コストの低い積立投資信託を利用する
前項で紹介したように、運用成績とはあくまでも過去の出来事。急な方針転換や運用担当者の変更で、未来の成績が悪化する可能性は0ではありません。また、投資は数年単位で結果が出るものでは無く10年20年と長期間を経て結果が分かるものです。そのため、コストの低い投資信託を毎月一定額積み立てる手法をお勧めします。
コストは運用成績が良くても悪くても、必ず投資信託ごとに定められた手数料が発生します。極端な話、リーマンショックのような大きな出来事があった時には運用成績がマイナス20%〜というケースも珍しくありませんが、それでも信託報酬や販売手数料が安くなることはありません。少なくとも、見直しを期待するべきではないでしょう。
だからこそ投資対象や運用成績にさほど差が無いなら、「コストが安いから」という理由で投資信託を選ぶのも1つの手段です。下記リンク先にインデックスファンド=市場平均との連動を目指す投資信託の特集がありますが、中には信託報酬が0.16%という商品も存在します。
*あくまでも参考として紹介しているため、実際にこれらの商品を利用するかどうかは各自の判断/責任でお願いします。
こういった商品で毎月一定額、例えばA投資信託を月1,000円、B投資信託を月1,500円等と利用していくと、低いコストの投資信託を毎月購入することが出来ます。また、多くの投資は日々価格が変動します。購入金額を一定にする、というのは購入単価を平坦化することが可能です(ドルコスト平均法と言います。詳細は下記2つ目のリンク先もご参照ください)。
これは必ず利益がでる手法ではありません。あくまでも購入単価が平坦化するだけで気休め程度でしかないという専門家もいらっしゃいます。筆者自身、これが万能の手法とは思っていませんが、この積立を利用するのは大きなメリットがあります。それは、「日々の価格変動に対して神経質にならず、高値掴みを避けることが出来る」ことです。
これらは投資するうえで当たり前のことですが、実際に自分のお金で投資していると必ず出来るとは言えません。しかし積立は自動的に(一定額で)購入してくれるため、高値掴みを避けて落ち着いて投資することが出来ます。これを1年2年…と続けていくと、それなりにまとまった金額が積み上がります。まずは1度、試してみることをお勧めします。
インデックス投資信託の成績の差はコストにあり!日本株、外国株、国内外債券、リートなど7資産別、最も信託報酬が安いインデックス投資信託はコレだ!|投資信託超入門|ザイ・オンライン
参照元:株式会社ダイヤモンド社(2016年10月時点、著者調べ)
じっくり研究!ドル・コスト平均法って万能? [資産運用] All About
参照元:All About(2016年10月時点、著者調べ)
自分の知識/経験を高める
今回の記事では問題点として投資家側、販売店側、商品側で分類して紹介しました。しかし実際のところ、投資家にしっかりとした知識さえあれば販売店から何を勧められようと商品の内容を吟味して取捨選択が出来るはずです。
ほとんどの投資信託には元本保証はありませんし、あったとしても投資家に不利な内容が多い状況です。どのような結果になろうと運用責任は担当者ではなく、投資した自分自身となります。ご自身の知識を増やしていくことが結果として今回挙げた問題全てにおいて対応が可能となります。
そのためにも、まずはしっかり勉強しましょう。投資信託を始めとした投資関係に関する本は多く出版されています。新書でも1,000円から2,000円で購入できますし、少し前に出版された本なら古本屋でも購入できます。図書館で借りるという手段も存在します。WEB上においても本記事/本サイトのように勉強できる場所はいくつも存在します。
また、各証券会社や運用会社主催のセミナー/勉強会も定期的に開催されています。こちらに参加して知識を深めることが出来ます(ただし、主催した会社の投資信託を始めとした商品の購入は即決せずに控えましょう。ある程度知識がついた後、必要だと判断したら申し込んでも遅くありません)。
少しずつ勉強を重ねていけば、知識だけでなく経験もついてきます。投資=経済ですから、投資の勉強は日々の生活と密接に結びつくため決して無駄にはなりません。また、投資は自己責任である以上、最後にものをいうのは自分自身です。自分の価値を高めるために、しっかり学んでいきましょう。
【投資信託選び】実際にあった失敗談から学ぶ!運用ポイントとは|
投資は、成功するより失敗する方がはるかに簡単だといえます。どうやったら失敗してしまうか、また失敗しないためにはどうすればいいか?を金融業界出身の私が知っている事例を紹介しながら失敗のポイントをまとめてみました。これでもう投資信託は怖くなるかもしれません。
まとめ
ほとんどの人にとって投資の元手=働いて得た収入から出しています。そのお金を託した(投資信託を購入した)結果、大損した時の精神的ダメージは計り知れません。だからこそ最初の投資信託選びは大変重要です。銀行の窓口で進められたから、雑誌のランキングで紹介されたから…これらを参考にすること自体が悪いとは思いませんが、結局最後は自分自身に跳ね返っています。
だからこそ、事前準備はしっかり行いましょう。大げさでは無く、本当に自分の人生を左右する可能性があるため、誰かのせいにしたところで意味がありません。ご自身の大切な資産ですから、しっかり勉強して悔いのない投資を心がけましょう。決して大損の可能性が0になるわけではありませんが、可能性を減らすことは十分可能です。ぜひ頑張ってください。
公開日:
最終更新日:2017/01/25